「経営判断」は経営者の重要な仕事のひとつです。今回は正しい判断をするためには何が必要かを考えてみたいと思います。
2009年から2011年まで、NHKで 「坂の上の雲」 というドラマが放映されました。司馬遼太郎の小説をテレビドラマ化したもので、主人公のひとりは日露戦争において旧日本海軍の連合艦隊参謀として日本海海戦の勝利に貢献した、秋山真之です。
このテレビドラマで、海軍大学校(海軍の指揮官を養成する機関)の教官となった秋山真之が、生徒である若い指揮官達に対し以下のように説くシーンがあります。
『無識の指揮官は殺人犯なり』
この言葉は、 秋山真之を演じた本木雅弘さんが実際の講義録から見つけたものだそうです。
指揮官が判断をひとつ間違えただけで多くの部下の命が失われる戦場において、無識な(戦略や戦術に対する見識や知識がない)指揮官による判断により部下の命が失われれば、それは人(部下)殺しと同じである。目まぐるしく変わる戦況のなかでも常に正しい判断を下せるようになるため、戦略や戦術に対する見識や知識を得ることが部下の命を預かる指揮官の務めであるということを、秋山真之は伝えたかったのではないかと思います。私も自らの不足を感じたときには必ずこの言葉を思い出すようにしています。
厳しく変化の激しい環境のなかで常に正しい判断を要求されるという意味では、 中小企業の経営者も戦場の指揮官と同じでしょう。では、正しい判断を下すためには何が必要でしょうか。もちろん知識や見識も必要ですし、判断材料となる情報も重要です。しかし、場合によっては判断材料が不足していても判断せざるを得ないことがあるかと思います。例えば、原価がわからなくても得意先に提示する見積金額を決なければならない、現場の社員の適性や努力、成長が把握できていなくても人事考課しなければならない、などです。
判断材料が揃っていれば必ず正しい判断ができるとは限りません。しかし、判断材料が足りない状態で判断することを「あたりまえ」にしてはならないと思います。判断材料が足りない状態で判断してよい結果がでたとしても、それは「まぐれ」であり、いずれは誤った判断を招きます。前述の例で言えば、ITによる原価計算の仕組みの導入や現場の社員との定期的な面談の制度化を検討するなど、判断材料となる情報を増やす、判断材料を得る仕組みをつくることを追求する姿勢を失わないことが、正しい判断のために必要なことではないでしょうか。
経営判断にあたって、またITなど情報を得るための仕組みづくりにおいては、第三者や専門家の意見や知見が有益なこともあります。もしご相談があれば遠慮なく当方までお声がけください。