前回は、「真善美(しんぜんび)」の「真」と企業経営について考えました。今回は「真善美」の「善」、「美」と企業経営について考えたいと思います。
まず、善について。「真善美」の「善」は「善い行い」という意味ですが、企業経営にとっての「善い行い」とはどのようなことでしょうか。
企業経営における「善い行い」を考えるうえで、日本の伝統的な商売に対する理念が参考になります。例えば、かつての近江(現在の滋賀県)の商人には「三方良し」という理念がありました。「三方良し」 とは、「買い手よし」、「売り手よし」、「世間よし」の精神であり、「商売は自分の利益だけでなく、買い手である顧客はもちろん、世の中にとっても良いものであるべきだ」という考え方です。
また、各家庭に常備薬を配布し、薬売りが定期的に常備薬を配布した家庭を巡回して薬を補充し、薬を使用した分の代金だけを徴収する「富山の薬売り」は、「先用後利(せんようこうり)」の代表例とされています。すなわち「顧客へのサービス提供が先で、利益は後からついてくる」という考え方です。
日本の伝統的な商売に対する理念には、自社の利益だけを追求しない、顧客や第三者の利益まで考えて行動することが「善い行い」であるという考え方がその根底にあるのではないかと考えます。企業が不正などの「善くない行い」をしてしまう原因のひとつとして、「自分(自社)のことだけしか考えない」ということもあるのではないでしょうか。
最後に「美」について。大相撲の世界では、力量と品格を兼ね備えた力士に対し、横綱という最高位の番付が与えられます。相撲の世界では、単に相撲が上手なだけでなく、品格も兼ね備えることが最高の目標であり、「美しいこと」とされるのではないかと思います。企業経営においても、真(企業の成長や事業の継続のための努力)と、「善」(他者をも利する経営理念に基づく善い行動)が一体になった企業は世の中から支持を得るはずです。企業として「美しい状態」であり、目指すべき究極的な姿であると考えます。
「真善美」は私の行動指針でもあります。私自身も、お客様である中小企業を支援するための最適なプロセス(真)を追求し、正しい倫理観(善)を持ち、 お客様である中小企業の発展(美)を実現するよう努力いたします。