「真善美(しんぜんび)」という言葉をご存じでしょうか。普段はあまり使われない、難しい言葉かと思いますが、私は以下のように捉えています。
「真」とは、真実を追求する知性
「善」とは、善い行い、倫理や道徳的に正しいことを行おうとする意思
「美」とは、「真」と「善」が一体化した状態
言葉の原点は哲学と言われており、人間としての最高の状態とされております。また、弓道の世界では目指すべき最高目標とされております。「真善美」 は企業経営に対する示唆に富んだ言葉でもありますので、今回はこの「真善美」うち、「真」について考えてみたいと思います。
弓道の世界では「正射正中」という言葉があります。「正しい射法で矢を射れば、その矢は必ず的に当たる」という意味です。誤解を恐れずにその意味を一般化すると、「プロセス(射法)が正しければ必ずよい成果(矢が的に当たる)につながる」ということになるでしょうか。さらに企業経営に当てはめて考えると、「売り方が正しければ必ず売上があがる」、「ITを導入し適切に業務改善すれば生産性は必ず向上する」などということになるでしょう。この場合、「正しい売り方」、「適切な業務改善」が目指すべき「真」になります。
しかし、そもそも 「正しい売り方」、「適切な業務改善」 とは何でしょうか。企業によって、また企業が置かれた状況や時代によってもその答えは変わります。また、「正しい売り方」や「適切な業務改善」を実現するために選択したプロセスが果たして本当に成果につながるのか、事前に確証を得ることは難しいのが現実ではないでしょうか。
弓道では、射た矢が的に当たらなかった場合、その原因を検証し、自分の射法を見直します。この検証と射法の見直しの繰り返しが弓道の稽古であり、上達のための道となります。企業経営でも、売上や利益、顧客や社員の満足度など、目標達成のために選択したプロセスを実践し、その成果を検証し、自社の状況や置かれた環境を考慮しながらプロセスを見直す一連の流れを繰り返すことが、企業の成長や事業の継続など、企業経営にとっての「真」に近づくための道であると考えます。
今回は、「真善美」の「真」について考えました。次回は「善」「美」について考えていきたいと思います。