IT導入と活用の勘所(その6)~ITベンダーとの接し方~

コラム

 前々回、パッケージソフトやクラウドサービスでは対応できない業務をシステム化する方法として、自社オリジナルの情報システムの内製化をご紹介いたしました。しかし、規模の大きな、または複雑な情報システムになると自社で内製化するのは難しくなります。そのような場合はITベンダーに自社オリジナルの情報システムを開発してもらうことになりますが、ITベンダーに情報システム開発を委託した経験のない会社もあるかと思います。今回は、情報システム開発の委託にあたり、ITベンダーとどのように接するべきか、そのポイントを考えたいと思います。
 
 一般的に、情報システム開発をITベンダーに委託すると、発注側の企業とITベンダーの要員をメンバーとするプロジェクトチームが結成されます。プロジェクトの期間は数ヶ月から、長いと1年以上に及ぶこともあります。プロジェクトが何の問題も発生せずに最後まで進捗することはまれであり、現場では様々な問題が発生します。例えば、仕様が決まらないため開発が先に進まない、原因不明の技術的な不具合が発生した、担当するITベンダーの社員が突然退職した、など…。

 情報システム開発プロジェクトが失敗する(予算や納期、品質が守れなくなる)と、発注側の企業のみならず、受託したITベンダーの損益にも影響を与えます。そのため、発注者とITベンダーはある種の運命共同体となるわけです。運命共同体である以上、プロジェクトの予算や納期、品質に影響を与える問題が発生した場合は、発注者とITベンダーとの間で共有され、協力して解決されるべきです。しかし、特にITベンダーからすると、自らの技術力や社員に対する管理体制を、顧客である発注者から疑われかねないような問題はなるべく表に出したくない、発注者には内緒で対応したいという意識が働くことがあります。

 もちろん、プロジェクトで発生した問題を隠したり、先送りするようなことはあってはならず、ITベンダーにはたとえ自らの非であっても問題を発注者と共有し、当事者意識をもって解決するという姿勢が求められます。一方で、発注者には、ITベンダーに対する「聞く耳」を持つことが必要です。ITベンダー側の原因により生じた問題であれば、「ITベンダーが解決すべき問題」として突き放したくなることもあるかと思います。しかし、あまり突き放してしまうとITベンダーとの距離が開いてしまい、ITベンダーとの協力関係は築けません。もちろん「聞き分けの良い」発注者になる必要はありませんが、ITベンダーの言葉には耳を傾け、ITベンダーと問題を共有できる雰囲気と関係をつくることが大切です。問題が発生したら積極的にITベンダーに協力し、時にITベンダーに対して恩を売るような意識で接したほうが、結果としては問題が早く解決し、プロジェクトが成功する確率が高くなります。

IT導入と活用の勘所(その)~
『ITベンダーには「聞く耳」を持って接すべし』