IT導入と活用の勘所(その1)~経営とIT活用~

コラム

 ここ数年、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉がブームです。『これからはDXだ』、『我が社もDXを』とお考えの方もいらっしゃると思います。ビジネスやITの世界ではすっかり定着した「DX」という言葉ですが、そもそも「DX」とは何でしょうか。
 2018年に経済産業省が示した定義によると、DXとは『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。』とあります。誤解を恐れず平たく解釈すると「データやデジタル技術を経営に活用すること」ということになるでしょうか。しかし、数十年前にコンピュータが企業に初めて導入されて以来、企業はデータやデジタル技術を経営に活用しようとしてきました。「DX」という言葉は、数十年前から認識されてきた、企業経営におけるITの意義を今風に言い換えているだけなのかも知れません。
 もちろん「DX」が意味すること自体に誤りはありません。ただし、流行やイメージ先行でIT化に取り組んでも成功するとは限りません。たまたま参加したDX関連のセミナーで紹介されたクラウドサービスに感銘を受けた経営者が、カスタマイズまでしてそのクラウドサービスを自社に導入したものの、現場で定着せず運用につまずいてしまった、などということはよくある話です。
 しかし、一方で、情報技術は着実に進化しております。これまでできなかったことがより安価に実現できるようになってきました。例えば、zoomなどのWeb会議システムは、それまでの仕事に対する常識や制約を超え、物理的に離れた相手とのコミュケーションを容易にします。また、クラウドサービスの普及により、パソコン(Webブラウザ)とインターネット回線さえあれば、高価なソフトウェアや機器を購入しなくても様々なシステムやサービスを利用できるようになりました。さらには、AI技術の進化により、手書きの文字も驚くほど高精度で認識しデータに変換できるようになるなど、情報化技術の進展による恩恵には枚挙にいとまがありません。「ITのことはよくわからないから」などと言って無条件にITを敬遠してしまうのも、経営課題を解決する機会を自ら捨ててしまうようで非常にもったいないと思います。

  ITは経営課題を解決するためのひとつの手段です。ITだけで企業経営にバラ色の未来をもたらすことはありませんが、IT化の目的をはっきりさせて正しく使えば、業務の効率化やデータを活用した意思決定など、企業経営にとって大きなメリットをもたらします。流行に流されることなく、かつITでできることを冷静に見極めることがIT導入と活用の勘所と言えるでしょう。

~ IT導入と活用の勘所(その1)~
『経営にITを活用するための秘訣は、「流行り言葉に惑わされず、食わず嫌いにならず」』